1.データベースの二次活用における法規制上の問題と今後
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概要
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最近になって,我が国にも大規模な医療情報データベースが構築されるようになったが,公益利用に関して十分な法制度の整備が行われているとは言いがたい.高齢者の医療確保に関する法律に基づいて作成されたレセプトおよび特定健診・保健指導のデータベースは一般的な公益利用に関して根拠法には記載がないために,利用に際して厳格な匿名化が求められ,安全管理に関する要求も厳しく,公益研究にとって使いやすいデータベースとは言えない.大規模病院の診療情報を大量に収集する日本のセンチネル・プロジェクトでは包括的同意で運用が始められようとしているが,匿名性に問題が生じた場合,同意の有効性には疑問が生じる可能性がある.一般に,公益目的の研究を行う研究者がプライバシーの侵害を意図的に行う可能性はないと考えられるが,法的な要求自体が曖昧であるために,研究が促進されない可能性もある.医学は診療情報の公益利用なしには発展はあり得ないので,明確で研究者にとっても患者にとってもわかりやすい法制度の整備が強く望まれる.幸い,医療情報等の活用に関する法の整備が検討されているが,議論中であり,薬剤疫学の研究者を含めて関心ある人の積極的な提言が求められる. (薬剤疫学 2012; 17(2): 101-107)