DEA法によるトルコのトウモロコシ作農場の生産技術効率の計測と経営者要因
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概要
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本論文は,トルコの穀倉地帯であるアダナ県におけるトウモロコシ作の農場別の生産性格差を究明するために,農場別調査を実施し,これに基づいて,(1) トウモロコシ作の農場別生産性格差をもたらしている技術要因を識別して,「生産技術効率」(TE)を計測すること,そして(2)この技術効率を,その背後要因としての経営者能力要因(農場経営主属性と農場属性)に関連づけることができるかどうかを検証することを目的とした.50戸の農家調査から分析データを収集した上で,第1の目的のためにDEA法(包絡分析法)で農場別にTEを計測した.その後,トービット分析法を援用して,技術効率指標の背景にある経営者属性要因の摘出を行った.DEA分析の結果から,主として要素投入水準が過剰なためであったが,68%の農場が技術的観点で不効率生産を行っていたことが明らかになった.次に,経営者能力を代理的に表現する経営属性指標を利用し,試行錯誤的なトービット分析によって,計測された生産技術効率格差の背景要因を見出す試みを行った.経営者能力を現す代理的な属性変数として,農場経営者の教育水準,年齢,家族労働力構成,そして農場規模が統計的に析出された.表層に顕示する生産技術効率の格差が,経営者能力に関係付けられたことは注目すべきである.とかく技術的側面にのみに注目されがちであるが,農業者の主体形成,すなわち「経営者能力」という資源に着目し,その能力,意欲を高める観点からの経営支援施策の重要性を指摘できた.実践的,かつ有効な農業経営診断情報システムの開発が今も模索されているところであるが,DEA法が農業経営改善の診断手法として有効であることも証明した.
著者
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永木 正和
University of Tsukuba, Department of Agricultural & Agribusiness Economics, Graduate School of Life & Environmental Sciences
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カシラ O.
Cukurova University, Faculty of Agriculture, Department of Agricultural Economics (Adana, Turkey), (Ozlem O. Kacira was formerly Research Fellow of University of Tsukuba, Dept. of Agr. & Agribus. Econ.)
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ブダック F.
Cukurova University, Faculty of Engineering & Architecture, Department of Environmental Engineering, Division of Environmental Science (Adana, Turkey)
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ブダック D.
Cukurova University, Faculty of Agriculture, Department of Agricultural Economics (Adana, Turkey), (Ozlem O. Kacira was formerly Research Fellow of University of Tsukuba, Dept. of Agr. & Agribus. Econ.)