空気熱源式ヒートポンプと燃焼式温風暖房機とのハイブリッドシステムによる冷暖房管理がバラ栽培の収量および品質に及ぼす影響
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概要
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バラ栽培において, ハイブリッドシステムによる冬季の暖房と夏季夜間冷房を組み合わせた温度制御と, 慣行の冬季暖房のみの環境制御が, バラの収量, 品質, 販売価格, および冷暖房経費など経営に与える効果を2009年6月から2010年5月までの1年間静岡県磐田市において検討した. ハイブリッドシステムは, 暖房能力49.2 W m-2のヒートポンプと, 暖房能力199.4 W m-2の重油式温風暖房機を併用し, 慣行は暖房能力133.4 W m-2の重油式暖房機のみを用いた. ハイブリッドシステムが収量品質に及ぼす影響を判断するために, 6~7月を夜間冷房開始前期間, 8~9月を夜間冷房期間,10~5月までを暖房期間とし,バラの収量・品質を調査した. 夜間冷房開始前期間,夜間冷房期間,暖房期間のいずれの期間においても,収穫本数は両区で統計的に有意な差は見られなか, た. 切花総重量は, 夜間冷房開始前は, 統計的に有意な差ではなかったが, 夜間冷房期間でハイブリッド区が1株あたり139.2 gと, 対照区の1株あたり91.0 gと比較して有意な差で多かった. 年間の切花総重量は, ハイブリッド区で有意な差で多かった. 切花の階級別の収穫本数は, 夜間冷房期間は, 対照区と比較してハイブリッド区で上位階級の収穫本数が多く, 60 cm以上の上位3階級ではハイブリッド区が17.645本m-2と, 対照区の9.107本m-2の約2倍の本数であった. また, 茎が細いなどの規格外品の発生本数は, 対照区で多かった. 販売価格のシミュレーションの結果, 年間の生産額ではハイブリッド区が, 対照区と比較して415円m-2粗収益が増加した. その増加の90 %が夜間冷房期間の増加であり, ヒートポンプによる夜間冷房の効果が高かった. 2009~2010年時の重油価格, 電気料金においては, ヒートポンプによる夏季夜間冷房を加えても, ハイブリッド区は対照区よりも年間冷暖房費が約25 %削減できることが明らかとなった. バラ栽培におけるヒートポンプの導入は, 重油価格高騰時において暖房費が削減できるだけでなく, 夏季の夜間冷房によるバラの収量・品質向上への効果もあった. 暖房費削減効果と, 夏季における収量・品質向上効果を加えると, 2009~2010年の電気料金であれば, A重油価格が32円L-1以上でヒートポンプの導入価格が償却でき, 経営に大きな利益をもたらすことができる.
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