カブリダニの胴毛パターンの種内変異
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概要
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カブリダニの胴毛パターンの種内変異を野外個体群および室内飼育個体群で調査した.8種の野外個体群では6.4~16.1%,ミヤコカブリダニの飼育個体群では 5.8~14.8%,ケナガカブリダニの飼育個体群では 8.6~31.6%の雌成虫が胴毛の変異を示した.これら胴毛の変異は,欠失,追加,挿入,移動,幅広,短小に類別され,欠失が追加や挿入よりも多く,幅広や短小は希であった.欠失は後胴体部の腹面に多く見られ,野外個体群のケナガカブリダニでは ZV3,フツウカブリダニでは JV3 で左右同時に欠失が観察された.ケナガカブリダニのIG飼育個体群では,ZV1(個体群内に観察された全欠失の49.5%)と ZV3(同37.8%)で多く観察された.この頻度は他の飼育個体群に比べて突出して多かった.野外個体群に比べて室内飼育個体群の変異幅が広いことから,これらの胴毛の変異は発生過程における偶発的な事象というよりも遺伝形質であることが示唆された.胴毛の欠失に関する遺伝要素が野外個体群に維持されることは,系統発生で仮定されている多毛から貧毛への進化的方向性を支持する可能性がある.また,胴毛欠失が遺伝的に固定されやすいことは,カブリダニの種多様性の向上に寄与する可能性を示す.
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