砂丘を越えて沿岸低地を遡上した津波による堆積モデル:北海道胆振海岸東部に分布する17世紀津波堆積物の研究例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道太平洋沿岸の胆振海岸東部に分布する古津波の復元を,堆積学的解析によって試みた.この津波堆積物は,現海岸線からの距離に対して,層厚と代表粒径が減少し,淘汰は良くなる強い相関関係を持つことが認められた.この津波堆積物の不攪乱定方位試料の粒度組成と粒子配列の解析からは,少なくとも3回の強い津波の浸入が認められる.特に,今回解析した地点1の津波堆積物の粒子配列のデータは,地点1では東北東への流れを示す遡上流のみからなる可能性を示した.これらの証拠から,砂丘の背後に広がる湿原に浸入した津波堆積物の堆積モデルを呈示した.最初に砂丘を乗り越えた津波は,地表面を侵食し,泥炭偽礫を取り込む.津波によって流入した海水のほとんどは,海側にある標高の高い砂丘のために海へ戻らずに,沿岸低地に静水域を形成する.引き続く津波は,この静水域の水底の堆積物を侵食する強い力は持たない.最終的に,海水は地下浸透と蒸発によって消滅する.
著者
-
西村 裕一
Institute of Seismology and Volcanology, Hokkaido University
-
岡村 聡
Sapporo Campus, Hokkaido University of Education
-
髙清水 康博
Mathematical and Natural Sciences Course, Faculty of Education, Institute of Humanities, Social Sciences and Education, Niigata University
-
永井 潤
Medical Administration Office Accounts Division, Hokkaido University