周産期心筋症を発症した長期透析妊婦の1例

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透析患者の周産期管理中，周産期心筋症が誘因と考えられる左心不全を発症した症例を経験したので報告する．症例はIgA腎症から腎不全となり16年間血液透析を施行している38歳の初産婦である．自然妊娠が成立し当院を受診され，週6回の透析管理を必要とするため妊娠19週に入院管理とした．透析後下大静脈（IVC）径やヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド（hANP），amniotic fluid index（AFI）を評価しながらdry weight（DW）を設定し透析管理を行った．妊娠33週3日に呼吸苦が出現し，胸部X線にて著明な肺水腫と心拡大を認めたため，緊急帝王切開術を施行した．児は1422gでApgar score 5点（1分値）/9点（5分値）で出生し，母体は術後に集中治療室へ入室した．心臓超音波断層検査にて左室駆出率（LVEF）が25%と全周性の壁運動の低下を認めた．ドブタミン（DOB）を使用し循環動態を維持し，持続的血液濾過透析（CHDF）を必要とした．既往のない突然発症の心不全のため周産期心筋症の可能性も考えブロモクリプチンも併用した．カルペリチドを用いることで心不全は徐々に改善し，DWを下げながら週3回の血液透析を施行し，術後16日目LVEFが32.5%まで改善し，日常生活動作の回復も良好であったため，術後26日目退院となった．後日，左心不全発症時の血液検査にて異型プロラクチンおよびカテプシンDの活性高値を認め，周産期心筋症が本病態の増悪に関与していることが示唆された．児は極低出生体重児のため新生児集中治療室での管理を要したが，現在，経過は良好である．透析患者の周産期管理においてIVC径からのDWの設定だけでなく，hANP・心臓超音波断層検査等の心機能評価の重要性が示唆された．〔産婦の進歩65（2）: 139-145，2013（平成25年5月）〕

周産期心筋症を発症した長期透析妊婦の1例

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