S状結腸癌に起因する結腸子宮体部瘻による子宮留膿腫の1例
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概要
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S状結腸癌が子宮へ穿通し,S状結腸子宮体部瘻が形成され,それにより高度な子宮留膿腫が形成された症例を報告する.症例は74歳で約1カ月前に尿閉を主訴に近医を受診し,腹部CTで子宮の著明な腫大を認め当科に紹介となった.前医の腹部CTでは,子宮内腔に液貯留を認め子宮留膿腫が疑われた.経腟超音波では,前方に偏位した子宮頸部の後方に子宮頸管と連続しているとおぼしき子宮腔に大量の膿貯留を認め,子宮留膿腫による尿道圧迫が尿閉の原因と推測された.子宮腔洗浄をしたところ便臭のある粘稠性の高い黄色内容物が多量に排出され尿閉は改善した.大腸子宮瘻を疑い大腸内視鏡検査を行ったが,S状結腸に癌を疑う潰瘍を認めたものの瘻孔は確認できなかった.潰瘍部の生検組織からは腺癌が検出された.大腸内視鏡検査翌日の下腹部MRIで,子宮内に多量のガスを認め,前日の送気操作で大腸から子宮に空気が漏れたものと推定され,またS状結腸癌の部分に子宮壁が接しており穿通が疑われた.以上の所見より,子宮留膿腫はS状結腸癌の浸潤穿通によるS状結腸子宮体部瘻によるものであると診断した.よって,S状結腸摘出術,結腸断端吻合,単純子宮全摘術,および両側付属器切除を行った.手術所見ではS状結腸の結腸ひもの反対側と子宮底部の前壁右側との間に強固な癒着があり,同部位に直径約1.5cmの瘻を認めた.摘出標本では,S状結腸に全周性の腫瘍を認め,潰瘍性の腫瘍の底部に約1.5cmの穿孔を認めた.子宮は筋層全体が水腫様に腫大しており,子宮底部右寄りに約1.5cmの穿孔を認めた.術後病理診断では,S状結腸には全周性の結腸漿膜まで浸潤する腺癌を認めたが,子宮は漿膜のごく一部に異型腺管を認めるのみで,瘻孔周辺の筋層内や子宮内腔には異型腺管は認めなかった.術後経過は良好であった.〔産婦の進歩65(1):58-63,2013(平成25年2月)〕
著者
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廣瀬 雅哉
Department of Obstetrics and Gynecology, Shiga University of Medical Science
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細野 加奈子
Department of Obstetrics and Gynecology, Tsukaguchi Hyogo Prefectural Hospital
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濱西 正三
Department of Obstetrics and Gynecology, Tsukaguchi Hyogo Prefectural Hospital
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邨田 裕子
Department of Obstetrics and Gynecology, Tsukaguchi Hyogo Prefectural Hospital
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佐藤 加苗
Department of Obstetrics and Gynecology, Tsukaguchi Hyogo Prefectural Hospital
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佐藤 浩
Department of Obstetrics and Gynecology, Tsukaguchi Hyogo Prefectural Hospital