心毒性を有する抗癌薬投与の影響
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概要
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目的: 抗癌薬投与後の心臓の変化を観察し, 薬剤投与量との関係を分析検討.<BR>対象: 連続20カ月間に初回化学療法(シクロフォスファミド, エピルビシン, 5-FU)の3者併用療法(CEF)を終えた乳癌患者連続137例.<BR>方法: CEF数クール施行前後に心エコーを施行し, 左室内径[left ventricular end-diastolic diameter(LVDd)/ left ventricular end-systolic diameter(LVDs)], 左室容量[(left ventricular end-diastolic volume(LVEDV)/left ventricular end-systolic volume(LVESV)], 中隔壁厚(interventricular septal thickness; IVST), 後壁厚(posterior wall thickness; PWT), 左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF), E/A比, Tei index(T-I), 左室心筋重量(left ventricular mass; LVM), 左室心筋重量係数(left ventricular mass index; LVMI)を算出し抗癌薬投与前後での変化を分析. LVMIおよび相対的壁厚(relative wall thickness RWT)の関係から心筋重量変化の内容を分析. さらに, 抗癌薬総量(ΣCEF), 体表面積あたりの抗癌薬総量(ΣCEF/BSA)および左室単位心筋あたりの抗癌薬総量(ΣCEF/LVM)と, ΔLVMの変化率(ΔLVM)(%)の相関を分析.<BR>結果: LVEF, E/A比T-Iは, 抗癌薬投与前後で有意変化を認めなかったが, LVMおよびLVMIは投与後に有意な増加を認めた. また, ΣCEF/LVM, ΔLVM間およびΣCEF/LVMI, ΔLVMは有意な正の相関を認めた.<BR>考察: 心毒性を有する抗癌薬の投与の結果LVMの有意な増加が認められ, 遠心性肥大の傾向が示唆された. またその変化率は心筋重量1gあたりの抗癌薬量と相関関係を認めたことは興味ある現象であるが, 心毒性を有する抗癌薬の心筋障害との関連については, 今後の検討が必要である.