透析患者における上腕―足首脈波伝播速度の経年的変化に及ぼすエイコサペンタエン酸の影響
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概要
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【目的】血液透析患者に対する高純度エイコサペンタエン酸エチル(ethyl-eicosapentaenoic acid:EPA-E)製剤の動脈硬化進展抑制作用を上腕―足首の脈波伝播速度(baPWV)により検討した.【方法】平成16年から平成22年までに当院を受診した血液透析患者173例を対象に,(1)平成22年度の患者背景別baPWV値,(2)EPA-E投与群と非投与群のbaPWV値の比較(1年間および最長6年間の経年的推移)をレトロスペクティブに検討した.【結果】患者背景別のbaPWV値は,糖尿病または高血圧合併例,脳血管疾患合併例において統計学的に差は認められなかったが高値であり,虚血性心疾患合併例においては有意に高かった.1年間におけるbaPWVの平均値の変化は,EPA-E非投与群では統計学的に差は認められなかったが上昇した一方(+3.0%),EPA-E投与群では変化がみられなかった(+0.2%).baPWVの経年的な平均変化率は,EPA-E非投与群では有意な上昇(p<0.05)がみられたが,EPA-E投与群では変化がみられなかった.【結論】EPA-Eの投与によって血液透析患者の経年的なbaPWVの上昇が抑制される可能性が示唆され,EPA-Eは透析患者の心血管イベント発症抑制に有益である可能性があると考えられた.