心不全に伴う不整脈の治療戦略 6.心不全に伴う不整脈のアップストリーム治療
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概要
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【背景】不整脈基盤形成を上流で抑制するアップストリーム治療は,リズムコントロール手段の限定されるうっ血性心不全(CHF)症例にはおおいに期待される治療概念である.しかし,その最有力候補たるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の効果も,アップストリーム治療を一次エンドポイントとした試験では有意性が証明されていない.今回われわれは,CHF症例における不整脈新規発症に対するARB/ACEIの効果を自験例で検討した.【方法】対象は,当科に心不全(>NYHA-III)で入院既往のある連続526例である.入院時に,心房細動(AF)ないし心室不整脈〔心室頻拍・心室細動(VT/VF)〕の有無を電気生理学的検査(限定症例)もしくは長時間モニタで評価した.入院時にAFないしVT/VFの認められなかった290例において,観察期間中の不整脈の新規発症を評価し,不整脈発生を規定する臨床背景と治療介入について,単変量および多変量解析を行った.【結果】初回入院時,VT/VFは79例(自然発作:誘発=40 : 39),AFは190例(発作性:持続性=54 : 136)に認められた.不整脈のある群とない群で検討したところ,左室駆出率(LVEF),退院時BNP値,左房径に有意差を認めた.18±9(6~44)ヵ月の後ろ向き観察の間に,VT/VFは41/290例,AFは43/290例で認められた.多変量解析では,退院時BNP値>200pg/ml,ARB/ACEIの非内服が不整脈出現の有意な独立予測危険因子であった.【結語】心不全での入院既往のある症例において,初回入院時にAFないしVT/VFが45%の症例に認められた.不整脈を認めなかった症例においても,18ヵ月の観察期間で30%に出現した.不整脈新規発症の予測因子は,退院時BNP値とARB/ACEIの非内服であり,ARB/ACEIが不整脈予防に有用である可能性が推測された.
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