所謂る味盲現象に就て (一):内地人、臺灣人に於ける味盲現象並に味盲現象の種族的、年齢的、性的差異について
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概要
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(一) 所謂る味盲現象の發見、及び之に關する從來の研究に就て、單にその所在を示す程度の極めて概括的な記述をなす。(二) Para-phenetidinより精製したるPara-ethoxy-phenyl-thio-carbamide (m. t. 172°-172.5°) の結晶を用ひて、臺灣在住内地人五八七一人、及び本島人 (臺灣人) 三一七二人を檢し (二歳より八五歳)、此の化合物に對する味覺的反應を統計的に觀たろ結果、所謂る味盲現象の存在することを確め得た。即ち内地人に就ては全く味感なき者一三・二%、苦味を感する者 (大部分は苛苦を感ず) 八三・七四%、甘酸其他の味覺を感ずる者三・一七%、本島人に就ては、上の順に六・八四%、九〇・〇四%、三・一一%を獲た。(三) 本研究の結果より得たる無味感者についての、内臺人の比較、それ等と米國白人及びアメリカ印度人との比較の結果、此現象については明かに種族的差異の存在することを斷定する。(四) 本研究に含まるゝ内地人人員の九八%を占むる六〇歳以下の被檢者については、本現象についての出現頻度の比率より見たる年齡的差異は殆んど存在しない。高齡者の頻數は其だ少い爲め六〇歳以上の人に於ける年齡的差異は不明である。但し高齡者に於ても、種々の味覺的反應者のあることに變りは無い。(五) 内地人、本島人の味盲現象について、その性的差異を考察するに、全體的には男女間に於ける差異は認め難い。此點に關しては外國に於ける在來の研究結果に反する。内地人について觀るに、種々の年齡期間に於ける性的差異は多少存在するが如く見ゆるも、確言し難い。正確な實驗の基礎の上に立つ多數の統計を必要とする。
- 公益社団法人 日本心理学会の論文