B式團體智能檢査の一試案
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概要
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(一) 此の稿は東洋諸民族の智能を比較する用具として問題の解釋及び解答に國語の力を必要としない團體智能檢査に關する一試案の報告である。(二) 被驗者は東京市内の尋常小學校三校、高等女學校一校、中學校一校、高等女學校一校の兒童生徒で、男子一五八〇名、女子一五七一名で合計三一五一名である。(三) テストとして選定したものは十種類であるが、小學校等に於て使用する場合を考慮して所要時間短縮の目的で八個のテストの成績について整理した。而して、十個のテストを全部用ひた場合と八個を用ひた場合とでは小學校兒童六學級のものについて調査した所によれば、綜合成績に於て〇・九七五の相關のあることを發見した。それ故に十個のテストを全部用ひても八個だけを用ひても智能檢査としては效果の上に大差はない。(四) 各テスト相互の相關係數は餘り大でない。(五) 同一の組の兒童に四ケ月の間隔を隔てゝ二回行つた綜合成績間の相關係數は八個のテストの場合の平均〇・八七七、十個の場合の平均〇・八七九である。(六) 各年齡級の成績の分配状態から見れば個人差を辨別するに十分な脱逸度を示し、又分配曲線の形状から見ると正常な曲線に近い。(七) 國民智能檢査の成績とこのテストの成績とを相關せしめると、八個を利用した場合に〇・七〇一、十個を利用した場合は〇・七三六である。(八) 前記 (四) (五) (六) (七) の事實から、此のテストは一般智能の測定用具として、かなり信頼してよからうとおもはれる。(九) 此の檢査法によつて兒童及び生徒の智能を測定した場合に、各個人の成績を判定する場合の基準として、八歳から十六歳までの各年齡級に於ける各滿月毎に代表値及び標準錯差を示す假標準表 (第十三表) を設定して置いた。此の標準表は近い將來に於て被驗者を増すことによつて改訂するつもりである。
- 公益社団法人 日本心理学会の論文