Sustainable Aquaculture in the Estuary Area
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概要
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河川が沿岸域に流入して構成される汽水域は,農林畜水産業,工業および都市(文化)生活との接点となっており,この地域は,これらの産業および人間生活の影響を同時にうける.<BR>熱帯,亜熱帯地域では,この汽水域にマングローブが繁茂し,またマングローブの地先には海草藻群落が分布する.そして,この水域における,魚類,甲殻類(エビ,カニ),貝類などの主要な食物源は,マングローブ葉や海草藻由来の有機物(デトリタス)であるため,マングローブとマングローブ林中を流れる河川の面積比(マングローブ林面積/河川面積)の大きい,すなわち,マングローブがよく繁茂する水域では,魚類や貝類の漁獲量が飛躍的に多くなる.<BR>デトリタスには,微生物が被覆するように付着しているため,デトリタス(すでに分解の進行していう有機物体)の栄養価の大半は,微生物に依存する.このため,デトリタスに由来する食物連鎖は,微生物(デトリタス)食物連鎖とよばれている.<BR>この微生物食物連鎖を水産養殖に適応するために,魚類の成長を促進する微生物(細菌)を探索,分離した.さらに,これらの微生物株のなかで,病原微生物(病原細菌,真菌,ウイルスなど)を抑制する機能を保持する株を選択した.そして,これらの有用微生物を飼料に混合して養殖魚に与えたところ,魚類の生残率が向上し,かつ疾病防除の効果が得られた.このような,微生物によって病原微生物を防除(排除)する方法,生物防除(バイオコントロール)は,自然に備わった機能であり,その有効利用によって,環境と調和した(薬剤を使用しない),安定した養殖生産が可能となる.