有機エネルギーデバイスの炭素材料選択指針を目指したin situ ESR測定用高感度電気化学セルの開発
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概要
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この研究は、ラミネート型電気二重層コンデンサ(EDLC)モデルセルを使用して、EDLCモデルセルに使われている電極中の炭素ラジカルの動態を、in situ電子スピン共鳴(ESR)方法とサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いて測定した結果を示したものである。ラミネート型モデルセルは高い誘電損失を伴う電解質溶液を含んでいるので、モデルセル中のラジカルをESR法によって測定できることを確認する必要がある。この課題を、ESR共振器内にセルを挿入するときの距離を5 mm程度に調整することによって解決した。得られたESRスペクトルのESR信号により、g値が2.0028であることが計算され、炭素中心のラジカルであることが特定された。また、炭素ラジカルのESR信号のS/N比は、74であった。ゆえに、作成したラミネート型EDLCモデルセルがin situ ESR測定で使用できることが示唆された。伊藤らによって開発された円筒型ESRサンプルチューブタイプのEDLCモデルセルより、感度が15倍程度に増加したセルを用いた。また、セルの幅を薄くしたことによって、電解液の高い誘電損失の影響によるESR信号のブロードニングが軽減されたためESR信号の線形がシャープになり、高精度なg値の決定や新規ラジカル種の発見が可能になることが期待される。次に、このラミネート型のEDLCモデルセルを使用して、CV測定とESR測定を同時に行った。このとき、CVのサイクル数が増加するにしたがって、炭素中心のラジカル量は増加した。充放電を繰り返すにしたがって、炭素中心ラジカルの量は増加するが、ラジカル種は変化しないことが示唆された。今後、電極材料や電解液の種類を組み合わせて本研究手法による分析を行い、電気化学計測から得られるインピーダンスや充放電サイクル特性と炭素ラジカル量の関係を明らかにできることが予想され、EDLCやリチウム二次電池をはじめとする有機エネルギーデバイスの炭素材料選択指針を提案できることが期待される。
著者
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立花 和宏
山形大学 大学院理工学研究科
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仁科 辰夫
山形大学 大学院理工学研究科
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伊藤 智博
山形大学 大学院理工学研究科
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尾形 健明
山形大学 大学院理工学研究科
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永井 明雄
山形大学 大学院理工学研究科
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