林業施業に伴う放置土砂の堆積様式
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概要
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北海道・札幌市近郊の冷水沢支川流域では, 1992年の択伐施業に伴い, 斜面上にブルドーザーを用いて施業道が敷設された。このとき斜面を切り土して生じた土砂の多くは, 流域内の0次谷内に放置された。この作業は流域が比較的乾燥している5~6月に行われた。斜面から切り取られた土砂は, ブルドーザーにより0次谷内へ複数回に分けて排出され, 0次谷内では重力により斜面下方へ運搬された。この放置土砂上の最大傾斜方向に水平距離18mのトレンチを掘削し, このトレンチの壁面上に50cm×50cmのメッシュを切り, これをもとに堆積している各粒子の中心位置と形状を計測し, 縮尺10分の1のスケッチを作成した。このトレンチ沿いの斜面下部にはマトリックスを欠いた角礫のみが集積した部分が, 中部には特徴的な逆級層が複数枚認められる部分が, また上部には砂質の堆積物のみからなる部分が存在した。中部の単一の逆級層に注目すると, 上下方向の逆級構造とともに, 斜面方向にも特徴的な構造をもっていた。すなわち, 斜面上部ほど砂質堆積物に富むのに対し, 斜面下部ほど礫質粒子が多くなる一連のユニットが複数存在した。この単一ユニットの構造は, 混合粒径砂礫が斜面上を重力落下するときに生じるセグレゲーション現象によって形成されたと解釈した。そしてセグレゲーションにより前面に押し出された礫のうち, さらに転・落石として前方へ移動したものが, 斜面下部の礫層を構成したと判断した。
- 北海道地理学会の論文