女性の介護:ライフコース視点からの考察
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概要
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少子高齢化が進む中,介護を受ける側である高齢者と介護を担う側である若・中年者の人ロバランスの不均衡が生じている.また,産業構造の変化,低い経済成長,女性の職業意識の向上といった諸々の要因により,女性の被雇用者としての就業は増加の一途をたどっている.こうした戦後の大きな社会変化の中,女性の介護はどのように,またどのような面で,変わってきたのだろうか.本稿は,全国家族調査(NFRJsO1)を用いて,女性の介護経験とその規定要因の歴史的推移の実態についてのコーホート比較を行い,ライフコース視点から考察した.分析の結果,女性の介護経験率は,1940年代生まれの者以降顕著に高くなり,「中年期のいずれかの時点で一度は誰かの介護を行う」女性のライフコースが,この時期からより一般化していることが明らかとなった.また,女性の介護の規定要因については,どのコーホートについても,夫が長男である女性が介護を担う確率は,夫方親との同居という変数を介して,一貫して高いという結果が得られる一方,フルタイム被雇用就業が介護を担う確率を低くする傾向はもっとも最近のコーホートにのみみられることが示された.