韓国における社会福祉の動向:政策・構想・研究
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概要
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福祉政策や福祉国家論の研究対象国が先進諸国からアジア諸国に拡大している.1997年末に経済危機に見舞われた韓国を対象とする研究も増えてきている.研究の量が増加するにつれて,分析方法や理論的含意にたいして,精密さや多面的な視角が求められるようにもなってきた.本稿では,これらの研究に資することを念頭におきながら,対象を韓国に限定し,その社会福祉の動向について論ずる.<BR>本論における目的は,韓国における社会福祉の現状を政策,構想,研究の3つの側面から分析すること,そこから福祉社会学的な示唆を導き出すことである.まず政策については,その優先課題である人口高齢化と社会的格差の問題にたいする政策を検討した.っぎに構想については,金大中政権と慮武鉱政権における福祉政策上の理念である「生産的福祉」と「参与福祉」を比較分析し,その構想としての機能と可能性にっいて分析を試みた.政策と構想の現実からは,資本主義,民主主義,社会福祉をめぐる古典的な議論が展開されていることがわかる.そして人口高齢化や経済のグローバル化を背景とした近未来が想定される現在,この議論がより現実味を帯びて韓国社会全体に影響を及ぼし始めている.さいごに,研究に関しては,社会福祉研究のテーマと方法論の多様化,研究者の多層化について考察した.韓国における社会福祉学と他の学問分野との関係性は,日本の社会福祉学と福祉社会学の関係性を考えるうえで示唆的な意味をもつ.
著者
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