福祉の価値空間の社会学:その序論的検討
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概要
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21世紀初頭の現在,20世紀に浸透した福祉国家化の価値のとらえ直しが進行しつつあり,そこに福祉社会学がマクロ社会学あるいは社会理論として取り組むべき課題があると考えられ,本稿ではその論点を整理する.その際福祉に関わる価値を社会学的に対象化・相対化し,諸価値が錯綜し立体的に配置される福祉観としてとらえるべく,福祉の価値空間という視点をもちながら考察を進めていく.<BR>本稿では,そのような福祉の価値空間の変容をとらえるため,社会構想,社会制御・社会形成,問題把握という分析上の3点を設定し,各々について論点を整理していく.社会構想の視点としては,自由と拘束をめぐる福祉の規範理論が活発化しているが,それを関係性の4象限として整理しなおしつつ,社会学における共同性への強い関心の自覚化と相対化の必要性を論ずる.社会制御と社会形成の視点からは,福祉国家にひそむ国家中心主義の時代的困難が進みつつあり,再編の可能性としてある福祉社会論福祉政府論福祉世界論の論点を確認したうえで,近年福祉国家と福祉社会の架橋を期待される福祉ガヴァナンス論の動きについてふれる.最後に,問題把握の視点として,必要の議論が再浮上してきているが,同時にリスクや自己決定など新たな視点も錯綜しつつあり,福祉領域の独自性と領域間の連関を確認することが求められている.
著者
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