歯と歯周組織の微小循環 (第1報):ラット臼歯歯肉上皮下の毛細血管に関する微細構造学的・細胞化学的研究
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概要
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Wistar系ラット (4-5週) の健康歯肉を材料として, 歯肉上皮下の毛細血管網の立体構築と, その内皮細胞の微細構造ならびに物質通過性を, 樹脂注入血管鋳型法, 塩酸-コラゲナーゼ消化法, horseradish peroxidase (HRP) およびmicroperoxidase (MP) を用いたトレーサー実験によって検索を行った.外縁上皮下では, 終末毛細血管の分布はきわめて疎で, 歯肉縁付近にほぼ一層の不規則で平面的な網状毛細血管がみられた.内縁上皮下では, 終末毛細血管が歯肉縁付近で特徴的な係蹄 (終末ループ) を形成した後は, 静脈性毛細血管に移行し, さらに外縁上皮側の静脈と吻合していた.塩酸-コラゲナーゼ法で付着上皮外基底面を観察すると, 全体として平坦な表面を呈していたが, 部分的に歯軸に一致した深い上皮の陥凹像がみられ, さらに横断像では, 陥凹は内基底面の直前にまで達していた.この陥凹部の上皮表面を観察すると, 微絨毛や微小堤が欠如しており, これら陥凹部が付着上皮内に侵入した毛細血管の印象像にあたることがわかった.HRPの固定前投与では, HRPの反応は毛細血管の管腔内外と内皮細胞表面, さらに内皮細胞内の多くの被覆小胞や被覆陥凹に明瞭に認められたが, 内皮細胞間の結合部位では消失していた.HRPの固定後投与群では, 反応物質はおもに毛細血管の管腔内外に分布し, 内皮細胞内の取り込みは管腔側の被覆陥凹や滑面小胞にのみわずかに認められたにすぎない.また, 内皮細胞の窓の部分は反応陽性で, 管腔外にみられたHRPは, この窓を経て拡散したものと考えられた.なお, 内皮細胞間のタイト結合部位では, 固定前投与群同様に反応が消失していた.MP投与実験では, HRP固定前投与群と同様な結果を得た.以上の実験結果から, 歯肉上皮下終末毛細血管の中では, 内縁上皮下毛細血管が, 上皮内に深く侵入し, しかも高い物質通過性を有すること, また, この通過性が, 内皮細胞の窓を経る拡散と小胞輸送に依存することが示唆された.