乳歯の生理的歯根吸収に関する微細構造学的研究 (第1報):破歯細胞の分化, 成熟, 退化過程について
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概要
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乳歯の生理的歯根吸収における, 破歯細胞の分化, 成熟過程を検索するため, 生後6か月の仔ネコの吸収期にある乳歯を, 通法の超薄切片法により透過型電子顕微鏡で観察した.また, ジアミノベンチジン法で, 組織中の内因性ペルオキシダーゼ活性を検索した.未成熟の単核および多核の前破歯細胞はペルオキシダーゼ活性陰性であり, 細胞質には多量のミトコンドリア, 粗面小胞体, ゴルジ装置, そして多数のリボゾームを含んでいた.これら前破歯細胞の表面からは, 多くの細胞突起が伸長し, これによって細胞相互が融合し, 多核化する像が観察された.多核化の過程と平行して, 前破歯細胞の細胞質は無数の空胞によって占められるようになるが, 象牙質から離れた位置にある前破歯細胞は, いまだクリアゾーン (clear zone) および波状縁 (ruMed border) を形成しなかった.細胞内の空胞は, GERLに相当する滑面小胞体およびゴルジ層板から形成されるように観察された.前破歯細胞が直接象牙質に接すると, まず象牙質に面してクリアゾーンが形成され, クリアゾーンに隣接する細胞質には, 前記の空胞が集積していた。その後, クリアゾーンの一部に空胞が移動し, 形質膜と融合することにより, 入り組んだ形質膜が形成された.空胞がさらに形質膜に供給されることによって, 破歯細胞は, 象牙質吸収面に接してよく発達した波状縁を形成した.十分に形態的な分化を遂げた破歯細胞は, 象牙質吸収面に露出した象牙細管内に, 多くの細胞突起を派生していた.一部の細胞突起は, 空胞, ライソゾーム等を含むが, 多くは細胞内小器管をまったく含まず, クリアゾーンの細胞質に類似した像を呈した.象牙細管中に進入した細胞突起は, 波状縁様の構造を示さなかった, 破歯細胞が吸収機能を停止すると, 波状縁の膜陥入は減少し, 波状縁を形成していた余剰の形質膜は, 細胞質中に, さまざまな大きさの空胞として回収された.その後, 破歯細胞の細胞質は, 不規則な形の多くの空胞と自己融解小体に満たされ, また好中球と融合した退化像を示した.これらの所見は, 乳歯の生理的歯根吸収における, 破歯細胞のライフサイクルを示すものと考えられる
- 昭和大学・昭和歯学会の論文