カニクイザル三角筋の筋線維構成について
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概要
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カニクイザル成獣10頭 (♂: 6, ♀: 4) の右側三角筋について, 筋線維分類と筋重量, 断面の筋線維総数および筋線維径の計測算定を行い, 同種のサルにおける棘腕筋および下肢筋と比較して, 三角筋の筋線維構成の特徴を明らかにした.筋線維の分類はSudan Black B染色によった.三角筋の筋重量は平均18.4g (13.1~26.5g) で, 棘腕筋中最大の僧帽筋よりもやや大であり, ヒトと比べて大凡体重比に等しかった.断面における筋線維総数は平均147, 511 (113, 996~194, 208) で, 前脛骨筋とほぼ等しく, 同筋よりも個体差は少なかった.さらに, 三角筋の中で中部 (acromiodeltoideus) は他の部よりも筋線維数が多い傾向が見られた.全筋線維中に占める白筋線維の比率は平均35.7% (27.3~42.4%) で, 棘腕筋よりもわずかに, 前脛骨筋よりも著しく低く, 赤筋線維の比率が他よりも高かったが, 三角筋中の部位差は認められなかった.筋線維の太さは平均, 白筋線維は3723.2μ<SUP>2</SUP>, 赤筋線維は2153.3μ<SUP>2</SUP>でそれぞれ棘腕筋に比べて著しく大で, 前脛骨筋に匹敵した.さらに, 三角筋後部では白筋線維4557.2μ<SUP>2</SUP>, 赤筋線維2515.8μ<SUP>2</SUP>で他部に比べて大で, 僧帽筋および前鋸筋の尾側部に大凡匹敵した.また, 筋線維の太さは両筋線維とも体重大の例では大なる筋線維が現われる傾向が見られた.白筋線維と赤筋線維の太さの比率は三角筋では平均1.73で, 他の筋よりも著しく小で, 赤筋線維が他筋に比べて特に大であった.以上のことから, 三角筋では全体として赤筋線維の比率が高くて持続的な収縮因子が強いことが考えられたが, さらに三角筋の中部は三部の中で最も筋線維数が多く, 三角筋では上腕の外転固定に働く頻度が高いことが考えられた.三角筋後部は白筋線維, 赤筋線維とも他部よりも筋線維径大で, 僧帽筋や前鋸筋の尾側部に匹敵し, これらの筋とともに上腕の後方伸展に強く働くことが考えられた.三角筋の筋線維数および筋線維径は体重と相関傾向が見られ, ヒトとの差も体重比に等しかったことから, ヒト三角筋の筋線維構成についても大凡カニクイザルに近いものであることが考えられた.
- 昭和大学・昭和医学会の論文