ラット脳各部位および子宮内膜中のmonoamine oxidaseに対するestradiolおよびprogesteroneの影響
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概要
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従来のMAO活性に対する性ホルモンの研究では全脳を使用しているため, 脳の一部での活性の変動はmaskingされている可能性がある.そこで脳を7部位に分け脳内MAO活性に対する性ホルモン (estradiolおよびprogesterone) の影響を無処置および卵巣摘出ラットを用い詳細に検討し, 同時にこれらホルモンの標的器官である子宮についても内膜を用い同様に検討した.ラットの脳をGlowinski&Iversenの方法に従い7部位に分け0.1M-Tris-HCl buffer (pH7.5) にてhomogenateを作製した.子宮内膜についても同様にしてhomogenateを作製し, MAO活性はこれらhomogenateを酵素材料とし14C-tyramine (50mCi/mmole) を基質として測定した.MAO活性に対するsteroidsの影響は反復あるいは1回投与について観察した.反復投与ではestradiol 0.2mg/kg, progesterone2, 4mg/kg, 19-norethisterone 0.4mg/kgを1日1回3日間皮下注射し, 1回投与ではestradiol 0.2mg/kg, progesterone 4mg/kgを腹腔内注射し次の結果を得た.<BR>無処置ラットの脳内MAO活性はhypothalamusで最も高く, 以下hipPocampus>cortex≅striatum>cerebellum≅midbrain>medulla oblongataでありmedulla oblongataの活性値はhypothalamusの約1/2であった.この無処置ラットの各部位のMAO活性値と卵巣摘出14日後のラットの活性値との間には有意な差は認められなかった.Steroidsの反復投与による脳内MAO活性に対する影響はestradiol投与では無処置ラットのcortex, 卵巣摘出ラットのcerebellum, hypothalamus, cortexで対照の約13~15%の低下が認められた.他の部位でも低下傾向がみられ, その程度は卵巣摘出ラットで著しかった.Progesteroneの反復投与では無処置ラットcortexで活性の上昇がみられた.他にやや高値を示す部位もあったが有意差, 投与量との関係は認められなかった.Progestational作用のより強力な19-norethisteroneでも同様でありMAO活性に殆ど影響は認められなかった.Steroidsの1回投与による脳内MAO活性への影響はestradiolによりmidbrainに活性の低下が認められたが他の部位では有意な差は認められず, progesterone投与ではいずれの部位でも変動はなかった.これらsteroidsの標的器官である子宮内膜におけるMAO活性については卵巣摘出により無処置ラツトの約2.6倍にまで上昇し, steroidsの反復投与による影響はestradiol投与では著明な活性の低下が認められ, 特に卵巣摘出ラットではその傾向が強く無処置対照群のレベル以下の値にまで低下した.Progesteroneの反復投与はestradiolの場合とは異り卵巣摘出ラットにおいては影響は認められなかったが無処置ラットでは子宮内膜MAO活性を対照の約1.9倍にまで上昇させた.<BR>すなわちestradiolによる脳内MAO活性への影響は特定の部位でなく広範囲にみられ, progesteroneによる影響は殆ど認められず, またその標的器官である子宮内膜のMAO活性に対しても内分泌環境がnormalな無処置動物では活性を増加させるが卵巣摘出動物では変動しないことなどからこれらsteroidsのMAO活性に対する影響は直接的なものではないように考えられる.
- 昭和大学・昭和医学会の論文