がん浸潤・転移機構におけるアクチニン-4の生物学的意義
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概要
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がん臨床において転移は重要な予後因子のひとつである。分子レベルでの転移機構の解明が望まれている。転移には細胞の運動能が深く関わっており,細胞運動を制御する因子のひとつとしてアクチン細胞骨格のダイナミックな変化があげられる。われわれはアクチン線維を束状化するアクチニン-4(actinin-4, 遺伝子名:ACTN4)を単離し,本分子の発現が細胞突起形成と運動能亢進に関与することを明らかにしてきた。臨床病理学的には,アクチニン-4タンパク質の発現の上昇が浸潤性乳管がんの予後を規定するだけでなく,大腸がんのリンパ節転移にも相関した。肺小細胞がんからはがん精巣抗原として新規スプライスバリアントが単離され,診断マーカーとしての応用も考えられている。また最近では,actinin-4タンパク質の増加がACTN4の遺伝子増幅に起因することが明らかになり,ACTN4遺伝子増幅が卵巣がん,膵がんの症例で認められている。本総説では,がん転移・浸潤に対するアクチニン-4の生物学的役割について述べる。
著者
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山田 哲司
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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本田 一文
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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馬木 智子
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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三浦 奈美
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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宮永 晃彦
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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増田 万里
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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渡辺 隆文
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野
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渡部 幸央
国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野