低酸素状態におけるヒト歯根膜細胞の骨吸収性因子産生
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概要
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咬合性外傷を受けた健常な歯周組織では歯根周囲の歯槽骨が吸収し, 歯根膜腔の拡大が生じる。また, 咬合性外傷は歯周組織の細菌感染に起因する歯槽骨吸収を促進する因子と考えられている。ビーグル犬を用いた実験的咬合性外傷の報告から, 歯根膜組織では毛細血管は閉塞し, 循環障害が生じていることが病理組織学的に示されている。すなわち咬合性外傷を受けた歯根膜では, 酸素供給が低下した状態にあると考えられる。本研究は, 低酸素状態がヒト歯根膜細胞の骨吸収性因子産生に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。歯根膜細胞を低酸素状態 (1%0<SUB>2</SUB>) で培養した群 (Hypoxia群) および通常酸素濃度 (20%0<SUB>2</SUB>) で培養した群 (Normoxia群) に分けた。両実験群の培養上清から, 骨吸収性因子である血管内皮増殖因子 (VEGF), インターロイキン (IL) -6, IL-1β, 腫瘍壊死因子-α (TNF-α), およびプロスタグランジンE<SUB>2</SUB> (PGE<SUB>2</SUB>) の産生量をenzyrne-linked immunosorbent assayにより測定した。さらに, 各骨吸収性因子のmRNAの発現をreverse transcription-polyrnerase chain reaction法により検出した。その結果, Hypoxia群では, 培養上清中のVEGFおよびIL-6の濃度はNormoxia群に比較して有意に増加し (P<0.01), また両因子のmRNA発現においても, 同様な傾向が認められた。IL-1βの発現はHypoxia群のみから検出され, TNF-αおよびPGE<SUB>2</SUB>は両群から検出されなかったが, PGE<SUB>2</SUB>の合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2のmRNAはHypoxia群から検出された。このため, 通常酸素濃度でrecombinant VEGFを添加したところ, 3時間以降でPGE<SUB>2</SUB>産生を認めた。さらに, 低酸素状態から通常酸素濃度に戻す再酸素化を行ったところ, 9時間以降でPGE<SUB>2</SUB>産生の誘導が確認できた。これらの結果から, 咬合性外傷により圧迫され, 低酸素状態に陥った歯根膜組織では骨吸収性因子が産生され, 歯槽骨吸収に関与する可能性が示唆された。
- 2003-09-28
著者
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