遺伝子の化学合成は可能か
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概要
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遺伝子を化学的な言葉で定義すれば,特定の遺伝情報をもった高分子デオキシリボ核酸(DNA)ということになる。遺伝情報はDNAを構成している4種の塩基,アデニン,グアニン,シトシン,チミンの配列順序で決定されるので,遺伝子の化学合成とは,意のままに4種の塩基をつなぎあわせ,少なくとも遺伝情報発現のために十分な長さ,すなわち200個から600個の単量体がつながった高分子物質を合成するという,純合成化学的な問題に還元することができる。モデル実験として,100個ぐらいの単量体からなるDNA合成が,すでにウィスコンシン大学のコラナ教授のもとで行なわれ,着々と成果をあげているが,まだ化学合成したDNAが遣伝子としての活性をもつかどうか実験できるまでには至っていない。しかし,近い将来においては遺伝子の合成は可能であろうし,また合成DNAが医学への応用という面で限りない可能性をもっていること,さらにそれを達成するには,どのような難点を解決しなければならないかを論じた。