東西医学の接点 (1) : 中国伝統医学の機能的「五臓」と西洋医学の構造的「臓器・組織」の対比: 東西両医学に共通する「医学の基盤」の提唱
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概要
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『ヒポクラテス全集』には「黄色と黒色胆汁・粘液・水」の異常が疾患をひき起こすという「液体病理学説」がうたわれていたが, 中国伝統医学でも「気」「血」「水」が互いに密接に関連すると考えてきた。「気」の概念は『ヒポクラテス全集』にも, それ以後の西洋医学にもないが, 体液病理説をとなえた点では古代ギリシャの医学と中国伝統医学には類似点があると考えられる。「気」に関しては近年, 精神と肉体の密接な相関が還元的・分析的な西洋医学であきらかになって, ある意味で中国伝統医学の洞察に近づいている。現代の中医学の機能的「五臓六脈」と西洋医学の解剖学的「臓器組織」は, まったく別の概念であることを認めたうえで, 東西両医学に共通する「医学の基盤」を求める目的で, 中医学の機能的な概念である「五臓」に相当する西洋医学の構造的な実体としての「臓器組織」を, 同数・同列の「人体の範疇」すなわち「医学の基盤」として比較・対照することを試みた。東西医学の理論の場をできるだけ合理的に対照しようとするこの試みは, 西洋医学を学んだ者が, 中医学ひいては漢方医学を理解するために役立つステップであると考える。
著者
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