エンド-N-アセチルムラミダーゼ(M-1酵素)を用いて分離したStreptococcus pyogenesM3型株のM蛋白質の免疫・生物学的性状,特にオプソニン抗体生成能について
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概要
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1. Streptococcus pyogenes, M3型,Sv株(ATCC 21059)の粗細胞壁画分をエンド-N-アセチルムラミダーゼ(M-1酵素)で処理し,得られたMタンパク質を含む粗細胞壁溶解産物を硫酸アンモニウムにより塩析した。30-80%飽和硫安画分に濃縮されたMタンパク質をQAE-Sephadex A-50カラムを用いて分画,精製した。2. 精製されたMタンパク質(mur M3)は,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で実際上一本のタンパク質のバンドを与え,その分子量は,150,000-160,000,等電点は,5.9であつた。ゲル内沈降反応による検定結果も,mur M3が免疫学的にも事実上均質であることを示した。3. Mur M3の構成成分は,もつぱら,グルタミン酸,アスパラギン酸,アラニン,グリシン,ロイシン,スレオニン,セリン,バリンなどのアミノ酸であつた。細胞壁ペプチドグリカンの構成成分であるムラミン酸やグルコサミンは含まれていなかつたが,非ペプチドグリカン成分であるラムノースと有機リンは,ごく微量ながら検出された。4. Mur M3は型特異的と考えられるオプソニン中和作用を示し,この作用はトリプシン処理により失われたが,塩酸酸性下での加熱では破壊されなかつた。5. Mur M3は,マウス胸腺細胞に対して明確なマイトジェン作用を示した。また,ヒト血清の補体系を正および別の両経路を介して活性化した。6. Mur M3は,モルモットに対して強い免疫原性を示し,アジュバントの添加を要せずに,10μgの用量で比較的長期間持続するオプソニン抗体を生成させた。得られた抗mur M3モルモット血清は,マウスに型特異的感染防御能を受身伝達することが示された。Mur M3はマウスおよびウサギに対しても,モルモットに対する場合にくらべて弱いながらもオプソニン抗体を生成させる免疫原性を示した。
- 日本細菌学会の論文