腸内常在菌と胆汁酸代謝 : Shigella flexneri 2aに対する胆汁酸の影響
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概要
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無菌マウス腸管内におけるShigella flexneri 2aと人工菌叢との拮抗の場において胆汁酸の影響を追究し,次の諸成績を得た。1) 使用各菌種のin vitroにおける胆汁酸代謝能を検査したところ,Shigellaは脱抱合作用,酸化作用のいずれをも示さず,Streptococcus faecalisは脱抱合作用,Escherichia coliは酸化作用を示した。また,Bacteroides distasonisは脱抱合,酸化の両作用を示した。2) ICR系無菌マウス(6週齢)腸管内にShigellaを定着させて1週後にS. faecalisとE. coliを経口投与し,糞便培養によりShigellaの消長を調べた。Shigellaの糞便中の生菌数は経時的にしだいに減少し,約45日で検出されなくなつた。一方,S. faecalisとE. coliは常時full growthの状態で定着していた。Shigellaが排除された時期に小腸における胆汁酸代謝産物を定量的にガスクロマトグラフィーで分析し,7-ケトデオキシコール酸の増量傾向を認めた。3) Shigellaが腸管内に定着しているマウスに,B. distasonisを経口投与し,糞便培養によりShigellaの消長を調べたが排除は認められず,この時期に7-ケトデオキシコール酸の出現はin vitroの成績からの予想とは異なつて,まつたく見られなかつた。続いてE. coliを追加経口投与すると,Shigellaはしだいに排除され,これに伴つて小腸内の7-ケトデオキシコール酸の量が増加する傾向を認めた。4) B. distasonisはin vitroとin vivoにおいて胆汁酸代謝能が異なることを経験した。以上の諸知見から,Shigellaの排除に対して胆汁酸代謝産物である7-ケトデオキシコール酸が重要な因子の一つであることを示し得たと考えたが,Shigellaの排除機構にはこの他に腸管局所で産生されるIgA抗体,酸化還元電位,低級脂肪酸などの諸因子も加わつて総合的に働く可能性があることを考察した。
- 日本細菌学会の論文
著者
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佐々木 正五
東海大学医学部感染症学
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橋本 一男
東海大学医学部感染症学
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田爪 正気
東海大学医学部生体防御系感染症学部門
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田爪 正気
東海大学医学部微生物学教室
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佐々木 正五
東海大学医学部微生物学教室
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橋本 一男
東海大学医学部微生物学教室
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