腸炎ビブリオにおけるデンプン代謝系
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概要
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Vibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)はデンプン,デキストリン,およびグリコーゲンなどの多糖類を炭素・エネルギー源として利用することができる。これら多糖類の代謝は,この菌が産生する一細胞外酵素アミラーゼに依存して行われ,この酵素を産生しない変異株(Amy-変異株)ではこれら多糖類の代謝のみが特異的に脱落する。これらの多糖類の代謝はマルトース代謝に欠失のある変異株(Mal-変異株)でもAmy-変異株同様ほぼ完全に脱落する。したがつて,細胞外アミラーゼの作用によりデンプン,デキストリン,あるいはグリコーゲンより生じる分解産物中実際たエネルギー源として利用されるのは,主としてマルトースであると推測される。野生株における細胞外アミラーゼの産生は,培地中にデンプン,デキストリン,またはマルトースが存在すると著しく促進される。したがつて,この酵素はこれらの物質を見かけ上の誘導因子とする一種の誘導酵素と見なすことができる。Mal-変異株における細胞外アミラーゼの誘導時活性は,しばしば野生株と著しく相違し,あるものでは野生株の2.5倍にも達するが,他のものでは野生株のわずかに7%程度である。このような所見は,細胞外アミラーゼの真の誘導因子がマルトースであることを強く示唆している。
- 日本細菌学会の論文