嫌気性球菌の分類学的研究 : II ガス産生について
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概要
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Prévotの分類提要によればガス産生は嫌気性球菌の同定に重要な性状である。ガス産生は培地の種類によつて異なると考える。Beerensらがガス産生の検討に用いているRosenow-cysteine培地と著者が常用しているワセリン重層GAM半流動高層培地におけるガス産生能を比較した。また,フランス学派が常用しているVF高層培地,VL高層培地についても比較検討した。3日培養後のRosenow-cysteine培地とワセリン重層GAM半流動高層培地との比較では,133株中112株が両培地で成績が一致,21株はワセリン重層GAM半流動高層培地でのみガスを産生した。この21株をガス産生陽性株としてPrévotの分類提要に従い同定すると21株中14株はPeptococcus asaccharolyticus,1株はPeptostreptococcus anaerobiusと同定され,6株は同定不能となる。逆にRosenow-cysteine培地の成績を基準にしてガス産生陰性とすれば同定不能6株はP. anaerobiusとなるが,GAM半流動高層培地の成績からP. asaccharolyticusと同定した14株は同定不能となり,同様にPs. anaerobiusはPs. morbillorumとなる。VF高層培地,VL高層培地を加えた4種の培地でのガス産生能を比較すればGAM>VF>VL>Rosenow-cysteineの順でガス産生株が多かつた。このようにガス産生能の成績はこれを検査する培地の種類により異なり,それによつてまつたく異なつた菌種に同定される。
- 日本細菌学会の論文