細菌・赤血球凝集反応のマンノースによる抑制および赤痢菌・マンナン凝集反応の熱力学的研究
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概要
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赤痢菌・赤血球凝集反応の発現機序を解明する目的で,この反応に対するマンノースの抑制機構について,またマンナンによる赤痢菌凝集反応とその抑制について,糖吸収の面からの化学的検討あるいは双子型回転式微少熱量計を用いた熱力学的検討を行なつた成績から,次のような推論が導かれた。1. 赤痢菌あるいは赤血球による単糖類の吸収実験では,D-マンノースのみが赤痢菌線毛株によつて強く吸収される。2. 赤痢菌線毛株はマンナンと反応して凝集を起こすことが観察された(赤痢菌・マンナン凝集反応)。この赤痢菌・マンナン凝集反応はD-マンノースによつて強く抑制される。3. 赤痢菌線毛株とマンノースとの反応では発熱型の反応曲線が記録されるが,線毛そのものとマンノースとの反応は吸熱型の反応であることが確かめられた。しかも,赤痢菌線毛株とモルモット赤血球との反応でも,凝集の実際の因子である線毛と赤血球表面との反応は吸熱反応であることが知られた。4. 赤痢菌とマンナンとの反応熱は,非線毛株では発熱型であり,線毛株では吸熱型である。5. 以上の成績から,赤痢菌・赤血球凝集反応,あるいはmannose-sensitive type (MS型)線毛をもつ菌株による赤血球凝集反応には,赤血球表面の線毛に対応する結合部位に末端糖として存在するマンノースが重要な役割を果たしていることが示唆された。
- 日本細菌学会の論文