日本における「社会階層と家族」の研究を振り返る : —階層研究と家族社会学の架橋のために—
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概要
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本稿の課題は(1)この20余年の階層研究における家族をめぐる研究の整理,(2)家族社会学で階級や階層に払われてきた関心のありようの検討,(3)両分野における1980年代半ば以降の研究動向のまとめと今後の課題の提示,という三つである。(1)に関しては,階層研究では家族は所有する社会経済的資源をもとに再生産機能を遂行する単位であるとみなされてきたこと,女性や家族も研究対象となったが家族内部の関係性への関心は低かったことが明らかになった。(2)に関しては,階級・階層論的アプローチの必要性は90年代後半まで指摘されてきたものの,実証研究は少なかった。また,90年代には家族の「個人化」「多様化」を「個人の選択」ととらえた研究への関心が高まったが,階層論的観点からの検討はおこなわれなかった。(3)については家族の社会階層や女性自身の階層が家族に及ぼす影響の実証的検討,階級や階層を考慮した個人化の再検討の必要性を指摘した。