染色体 (ヒト・リンパ球) に及ぼすフッ素の影響
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概要
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現在う蝕予防を目的として, 水道水のフッ素化, フッ素溶液の歯面塗布あるいは洗口などフッ化物の利用が実用化されている。しかし, 高濃度では種々の副作用が存在するという報告もあり, 使用に際してはその安全性について十分検討されねばならない。特に, 生殖年齢の人々には遺伝学的な面からも考慮する必要があると考えられる。<BR>本研究はヒト・リンパ球を用い, フッ化ナトリウム (低濃度フッ素) と染色体異常頻度について量-反応関係を検索し, フッ化物の細胞遺伝学的影響について検討を行った。<BR>24〜29歳の健康な男性9人の末梢血を用い, 72時間培養を行った。フッ化ナトリウムは培養終了24時間前に添加し, 最終濃度を0, 1, 2, 4, 8, 16ppmと設定した。分析細胞は1人1濃度あたり300個であり, 染色体の構造異常 (ギャップと切断), 数の異常, 分裂指数について検討し, 統計的処理を行った。<BR>その結果, 次の事が判明した。<BR>1. フッ化ナトリウム濃度1ppmで染色体構造異常発生の抑制効果が存在した。<BR>2. フッ化ナトリウム濃度0〜16ppmの範囲で8ppmにみられた最大異常頻度は約10%, 対照群 (0ppm) と比べ約1.5倍であった。16ppmでは8ppmと比べ, 構造異常頻度はむしろ減少するか平坦化の傾向があった。<BR>3. その他の異常 (分裂指数, 構造異常発生部位の特異性) については, 対照群と比べ有意差はみられなかった。
- 有限責任中間法人 日本口腔衛生学会の論文