ヒトのエナメル質に対する果汁入り清涼飲料の脱灰性とその対策に関する研究
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概要
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果実および果汁飲料はそのほとんどが有機酸を多量に含む食品であり, 歯におよぼす影響も等閑視できないものとして実験的研究がなされている。しかしいわゆるSoft drinksとしてのジュース, すなわち果汁入り清涼飲料などの歯に対する研究はほとんど行なわれていないので, これらジュースも天然果汁とほぼ同様のpH値としていることに加え, わが国の特異的普及状態からみて検討の必要性を感じ, ジュースがエナメル質におよぼす影響およびその対策について若干の検討を試みた。<BR>またジュースは幼児に愛飲されていることから, 乳歯においても同様の実験を行ない, 乳歯保護の一環としての検討をも行なつた。<BR>研究は (1) 抜去永久歯を用い各種果汁入り清涼飲料による浸漬実験を行ない, エナメル質の表面変化を検討した。 (2) 果汁含有主要酸であるCitric acid, Malic acid, Tartaric acidをオレンジジュース (JAS果汁30%含有) と同pHに調整し, 永久歯エナメル質粉末に対する脱灰性について比較検討した。 (3) オレンジジュースの永久歯および乳歯エナメル質粉末に対する脱灰性を検討した。 (4) オレンジジュースに対するエナメル質耐酸性増加の目的で, 永久歯および乳歯エナメル質粉末に弗化物を作用させ, 脱灰態度を比較検討した。 (4) エナメル質表面とエナメル質粉末とでは酸に対する反応性は異なるものであり, オレンジジュースによる乳歯の浸漬実験からエナメル質表面の変化を比較検討した。<BR>以上より, ジュースの脱灰性は強く, とくに乳歯に対してその影響は大であり, 対策の必要性を認めた。また弗化物作用によつてかなり耐酸性効果の期待できることを認めた。