工業用途への天然ゴムの展開
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概要
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天然ゴム(NR)はすでに100年以上にわたって工業材料に用いられてきた. 最近では海底油田用設備や免震ビル用の防振ベアリングなどにも用いられている. これら先端産業用途の材料としてNRは優れた特性を有している. 工業材料にとって弾性率及び硬さは最も重要な特性であり, この値が使用条件で一定を保つことが必要である. Fig. 1は-25°Cという低温においてNR製品の弾性率の変化が小さいことを示している. 温度やひずみ率による変化も小さい(Fig. 2). 免震は普通周波数比が3以上で作動するように設計され, Fig. 3のようにNRは合成ゴムより優れている. クリープも多くの場合に重要な特性で, Fig. 4に明らかなように乾•湿いずれの条件下においてもNRは優れた耐クリープ性を示す. ロンドンでアパートの免震用に使用されているNRベアリングのクリープをFig. 5に示す. この結果から100年間の使用に耐えるのではないかと推定されている.Fig. 6には純ゴム架橋体の疲労特性が示してある. NRは高変形時の荷重ベアリングに有用である. ゴムへの溶媒やオイルの透過•拡散はそれらの分子量に大きく依存する(Fig. 7)が, オイルに完全に浸せきされた状態で使用されるのでない限りあまり問題はないはずである. 海水中に常時浸せきされるような用途は大いに可能性がある. Table 1 に示すようにNRそのものは吸水しない. 最近,北海において42年間海水中にあったNR 100%のタイヤがほぼそのままであったことが報告されている. 橋梁ベアリングや免震ゴムなどは建築構造物と同じだけの寿命, すなわち耐久性が求められる.メルボルンの高架鉄道で96年間用いられたNRパッドは約12mmの厚さのものであるが, 1時間に列車が30回も通過するにもかかわらず良好な状態にあり, 約1.5mmの深さまで表面でいくらか劣化している程度であった. 当時の配合によりも現在のそれは格段に進歩しており, 工業用ゴム製品においてもかなり長期間の寿命が期待できる. 英国の自動車道で20年間使用された積層の橋架ベアリングの圧縮特性??攀??椀?? Fig. 8に示されている. スチール板との接着は良好で積層のはがれは認められなかった.このNRベアリングは20年使用後も元のスペックに適合するばかりでなく, 更に厳しいBS5400規格にさえ合うものであった.以上のように, NRは強度, 疲労特性, 低クリープ性, 低温での低結晶化傾向, 耐侯性など適切な配合の選択により優れた工業用材料となるゴムであり, 100年の実績を踏まえて今後更に広く用いられることであろう.
- 社団法人 日本ゴム協会の論文