新規乳がん治療薬エリブリン(ハラヴェン®静注1 mg)の抗腫瘍メカニズムと臨床効果
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概要
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エリブリンはクロイソカイメンから発見された抗がん物質ハリコンドリンBの誘導体である.微小管阻害薬であるが従来の類薬とは異なり,微小管の重合部位に選択的に高親和性に結合し微小管を阻害する.細胞周期のG2/M期でがん細胞の増殖を停止させアポトーシスを誘導する.エリブリンのin vitroの検討では,様々ながん細胞の増殖を阻害し,in vivoにおける検討では,乳がん,大腸がん,黒色腫,卵巣がんのモデルにおいて,腫瘍の進展を抑制し縮小させることが確認されている.エリブリンは,国内第II相試験において化学療法治療歴のある転移乳がん患者に対し奏効率21.3%の有効性が確認された.有害事象で発現率が高かったのは,白血球減少症,好中球減少症,脱毛症,リンパ球減少症などであった.海外の第III相試験(EMBRACE試験)では,既存の薬剤からなる主治医選択治療群との比較において,全生存期間の有意な延長が確認された.また末梢神経障害の発現が少ないという特徴も,臨床試験と基礎研究を通じて明らかになった.エリブリンの排泄は主に糞便中であり78.6%が未変化体であった.CYP3A4などの代謝酵素の影響を受けにくいため,他剤との併用のリスクは少ないと思われた.エリブリン投与では,過敏症に対する抗アレルギー薬等の前投与が不要である.水溶液のバイアルにて医療機関に提供され,必要量をそのまま投与または希釈後に点滴投与が可能である.投与時間が2〜5分と非常に短いこととあわせ,患者,医療従事者への負担が極めて少ない,製剤上の優れた性質を有した薬剤と言える.エリブリンは抗がん剤の前治療の少ない患者において,有効性だけでなく延命にもより貢献できることが示され,今後はより早期の乳がんに対する効果の検証が進められるであろう.
著者
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小笠原 若菜
エーザイ株式会社 エーザイジャパン オンコロジー領域部
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徳永 武志
エーザイ株式会社 エーザイジャパン オンコロジー領域部
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村上 美幸
エーザイ株式会社 エーザイジャパン オンコロジー領域部
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山下 雄次
エーザイ株式会社 エーザイジャパン オンコロジー領域部
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小山 則行
エーザイ株式会社 エーザイジャパン オンコロジー領域部
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