オレンジジュースのかっ変
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概要
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(1) オレンジジュースのかっ変は,アミノ酸とAAの反応が中心となって起こるという説が有力であるが(5, 8, 31),著者の結果からも,それが裏づけられる. 1) ジュースにAAを100mg%程度加えて貯蔵すると,かなり色が着く.合成ジュースでも,同じ程度の着色が再現でぎる. 2) ジュースにいろんなアミノ酸を加えて貯蔵したときの着色と,合成ジュースのアミノ酸の種類をいろいろ変えてみたばあいの着色,あるいは,いろんなアミノ酸とAAを混ぜた液の着色(22)を比べると,様子がかなり似ていることがわかる. (2) ジュースのかっ変には,金属イオンがかなり影響する,ジュースにCu++を加えると,文献(18, 28)のように,かっ変が激しくなる.また,合成ジュースでも,同じ現象が再現できた. こうしたことから,ジュースのなかのFe+++あるいはCu++が,ジュースのかっ変をひき起こすアミノ酸-AAの反応を,促進しているものと思われる. (3) ジュースのかっ変が, AAからできたFと,アミノ酸が反応してできるという説があるが,著者の結果からは,神谷(31)の提出したAA→Fの径路は通らないという説のほうが,妥当のように思われる. 1) ジュースにFを加えると,今井ら(18)の報告のように, AAを加えたときと同じように色が着くことは確かだが,ジュースにアミノ酸を加えたときのかっ変と,アミノ酸にFを加えた液の着色(23)とを比べると,アミノ酸の種類とかっ変を促す力との関係が,だいぶ違っている. 2) 合成ジュースでは,オレンジジュースのばあいとかなり近い程度の着色が再現できるが, AAの代りにFを使った合成ジュースでは,ほとんど色が着かない.また,合成ジュースにCu++やFe+++を加えると,かなり着色が促されるが, AAの代りにFを使った合成ジュースでは,ほとんど影響がない. (4) ジュースを38°に30日おいても,活性カルボニルの量はほとんど変わらない. (5) アミノ酸-糖反応は, Joslyn(8)もいうように,ジュースのかっ変には,関係しないものと思われる. 1) ジュースに糖を加えても,かっ変には影響しない. 2) ジュースのpHが約3である. 3) 合成ジュースからAAを除くと,かっ変が起こらない. (6) モデル実験から,ジュースのなかの糖は,アミノ酸とAAの反応を促しているものと考えられる.なおジュースのなかのクエン酸,ウロン酸,配糖体などは,かっ変の速度に影響することはあっても,かっ変の主役になることはないと思う.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文