ボルドウ液に関する研究(第5報) : ボルドウ液及び同製剤の工業的製造法について
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概要
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ボルドウ液及びボルドウ液有効固形分を濾過・乾燥・粉砕して,農業用保護殺菌剤としての各種製剤を工業的に製造する場合の各単位操作と,使用される装置との関係について検討をした. (1) 濾過・脱水方法について:同一の条件で反応調製したボルドウ液の場合,オリバーフィルターを使用したときに得られるぺースト状有効固形分は,遠心分離機を使用したときに得られるペースト状有効固形分に比して,わずかに含有水分が多い傾向があるが大差はなく,濾過機の部位・濾過時間の推移などによる採取された試料の化学的性質や,物理学的性状には全く差は認められない.一方,遠心分離機を使用せる場合には,有効固形分は遠心分離という簡単な機械操作(物理操作)によって容易に有効固形分を構成する各単一成分の分離をきたらし,その結果,ここに得られるペースト状沈澱物の化学的性質及び物理学的性状は,脱水機の各採取部位によって明らかにことなる.なお,同様の傾向はボルドウ液のみならずCuSO4・3Cu(OH)2を有効成分とするいわゆる塩基性炭酸銅の場合にも明らかに認められる.さらに,遠心分離機を用いて濾過・脱水を行なうときにはボルドウ液有効固形分の成分粒子が極めて微少であり,かつその真比重が小さいために, 1〜2回の処理で有効固形分を完全に捕収することは困難であり,その捕収を完全に行なうには少なくとも3回以上の反覆処理が必要となる. 以上要するに,ボルドウ液有効固形分の濾過・脱水を目的として使用する装置として遠心分離機を採用することは,望ましくないと考えられる. (2) 乾燥・粉砕方式について:ボルドウ液有効固形分は,その濾過・脱水方式のいかんを問わず,フラッシュドライヤーで乾燥せる場合に有効固形分粒子は明らかに硬化する.しかしながらトンネル式乾燥機あるいはリボン式乾燥機の如く,ペースト状沈澱物をそのまま〓状で乾燥せる場合にはこのような現象は認められない.この理由はボルドウ液有効固形分中に混在しているところのCa(OH)2,及びCaSO4・2H2Oの気硬性セメントとしての作用に起因するものである.さらにフラッシュドライヤーを使用せる場合には,ボルドウ液有効固形分は有効成分・Ca(OH)2・CaSO4・2H2Oの各成分に分離する傾向が認められる.特に有効固形分の粒子は極めて微少であるので,これを完全に捕収するためにベンチュリースクラバーを併置することが多いが,この装置はボルドウ液有効固形分の捕収装置としては好ましくない. 以上要するに,ボルドウ液有効固形分の乾燥装置としてフラッシュドライヤーを採用することは,望ましいことではない. なお,製造装置あるいは反応条件を変えて,ボルドウ液及び同製剤を工業的につくった場合,製品の懸垂性・粒度分布などの物理学的性質については,あらためて報告したいと思う.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文