麹菌の蛋白分解酵素に関する研究(第1報) : 液体培養において生産される2種のプロテアーゼについて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
Aspergillus oryzae A-1-5菌を用い,塩田らのきが培養法によって,強力なプロテアーゼ標品を得た.この標品中には少なくとも2種の電気泳動的に異なるプロテアーゼが存在することを認め,寒天を支持体とするzone electrophoresisでこれら成分を分取した.見かけ上陰極側に動く成分(真の移動の少ない成分)が主成分で, Crewtherのプロテアーゼと同一物と推定された.カゼインに対し至適pHは6.5〜10であって,その性質からalkaline proteaseと名づけらた.陽極に動く成分は至適pH 6.5〜7.5であって,三浦によりえられた酵素と同一物と思われ, neutralproteaseと命名された. Alkaline proteaseは耐熱性,種々のpHにおける安定性においてneutral proteaseに劣るが,各種阻害剤に対してはneutral proteaseに比しすこぶる安定であった.両者ともにI2, Hg2+, Fe3+等により強く阻害されるが, neutral proteaseはさらにH2O2, H2S,有機酸, metal chelating agents (EDTA, αα-dipyridyl)等に強く阻害された.またneutral proteaseは幾分亜鉛で活性化された.これらの事実からneutral proteaseは亜鉛を含むmetallo proteaseであろうと推論された. 両プロテアーゼともに,大豆トリプシンインヒビター,オボムコイドにより阻害されず,この点でトリプシンと区別される.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文