急激な進行を認め,診断・治療に苦慮した骨盤内腫瘍の1症例
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概要
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線維形成性小円形細胞腫瘍(Desmoplastic Small Round Cell Tumor 以下,DSRCT)は,小児期から青年期の男性の腹腔内に好発する非常にまれで予後不良な腫瘍である.今回われわれは急激な進行のため診断・治療に苦慮した骨盤内腫瘍として同症例を経験した.症例は32歳女性,未経妊.発熱および腰背部痛を主訴に来院.内診上,左付属器領域に可動性不良,境界不明瞭の硬い腫瘍を触知.経腟超音波にて左付属器領域に70×81×80mmの充実性部分と嚢胞性部分を合わせもつ腫瘍を認め,CT上転移性の肝腫瘍を疑う像も数ヵ所認めた.CA125,CA19-9の上昇も認め卵巣癌と診断した.術前検査中,腫瘍,とくに肝転移巣の急速な増大を認め,初診時より42日目に試験開腹術を施行するも腫瘍摘出不能であり,初診時より57日目にpaclitaxel/carboplatin併用化学療法を行うも治療及ばず,64日目永眠された.患者死後,免疫染色の結果よりDSRCTの診断に至った.腫瘍の原発巣に関しては,卵巣,後腹膜等を疑うも同定には至らなかった.死亡前の残血清より,SCC,CYFRA,NSEを調べたところ,SCC2.9ng/ml,CYFRA500ng/ml以上,NSE240ng/mlと上昇を認め,これらの腫瘍マーカーが術前診断の参考になる可能性が考えられた.〔産婦の進歩59(3):237-243,2007(平成19年8月)〕
著者
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竹村 正
竹村婦人科クリニック
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吉田 恭太郎
公立学校共済組合近畿中央病院 産婦人科
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須野 成夫
公立学校共済組合近畿中央病院 産婦人科
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多養 哲治
兵庫医科大学産科婦人科学教室
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上田 真太郎
公立学校共済組合近畿中央病院産婦人科
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細田 容子
公立学校共済組合近畿中央病院産婦人科
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多養 哲治
公立学校共済組合近畿中央病院産婦人科
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吉田 恭太郎
公立学校共済組合近畿中央病院臨床検査部
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須野 成夫
公立学校共済組合近畿中央病院産婦人科
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