ブドウ樹の栄養生理的研究 (第2報) : 生育時期を異にするブドウ樹の無機組成分について
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概要
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ブドウ,ブラック・クィーンの成木(7年生)を,1955年4月から1956年3月の間9回にわたつて,全樹体を掘りあげ,窒素,燐酸,加里,石灰,苦土の5成分の含量の時期的変化を調査した。 各成分の含有率は葉,結果枝,果房の如き新生部では発育とともに減少した。ただし葉の石灰だけは逆に増加した。枝幹や根の部分では時期による変化は少なかった。 樹体各部のうち成分含有率の最も高かつたのは各成分とも葉であつた。次は成分によつて若干異なつたが根,果房枝幹の順に少なくなるのが多かつた。また,枝では若いものほど含有率が高い傾向にあつたが,石灰のみは逆に古い枝幹ほど高かつた。 樹体の成分全量は各成分とも完熟期(9月30日)が最高であつた。この時期における葉,結果枝,果房(新生部)と結果母枝,枝幹,根(古い組織を主とする部)の成分の分布割合は窒素77対23,燐酸63対37,苦土56対44,加里85対15,石灰70対30であつた。 樹体の窒素量の増加は5月から7月の間に主として行なわれた。燐酸と苦土も窒素と同様であつた。加里と石灰は5月から9月に至る間漸次増加した。樹体の成分含量の最も多かつたのは石灰で,窒素,加里の順にこれにつぎ,燐酸と苦土はほぼ等しく最も少なかつた。 この研究は寿屋葡萄研究所長寺見広雄博士の御指導によつてなされたものであり,千葉大学吉江修司博士の御教示,御助言に負うところも誠に多い。ここに衷心より謝意を表する。また京都大学小林 章博士からは御激励をいただいた。ここに記して深謝する。
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