チューリップモザイク病に関する研究 (第6報) : 容疑チューリップよりウィルス検出
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概要
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萠芽期の William Pitt を検定植物として, 容疑チューリップ株からウイルスを検出する方法を用いて, 各種のチューリップの花や葉が示す症状とウイルス感染との関係を明らかにした。1. 黄色花 (Golden Harvest) または白色花 (Mrs. Grullemans, White Dutchess) の花弁に赤色細点や条線が見られても, 葉に病徴の無い株からはウイルスが検出されず, 葉に streak 症状が認められる株からのみ検出された。したがつて花弁に見られる赤色斑は必ずしもウイルス感染特有の病徴ではないと結論した。これらの品種では花色によるウイルス診断は困難で, 葉または花梗の色弁異常によらざるを得ない。2. ウイルス感染によつて地色の白色または黄色が露出しない紫色花品種 (Queen of the Night, Van derNeer) では, 花弁にかすかな濃淡斑を示す株からウイルスが検出された。花弁を陽にすかしてみるとよくわかるこの症状が, 濃紫色花品種のウイルス症状であることがわかつた。3. 覆輪品種で, その紅色部分に白色絞りがみられたPink Beauty からウイルスが検出された。このような品種では花に breaking による診断が容易である。4. Parrot 種の Sunshine はウイルスを含んでいなかつた。5. 八重咲きで花弁が赤と黄の斑入りを示す Nizza はウイルスを含んでいなかつた。6. Rembrandt 系は花に斑入りがあるのが特徴で, 遺伝的斑入りのものとウイルス性斑入りのものとがあるといわれているが, 供試した American Flag は, 葉にstreak 症状を示す株からはウイルスが検出されるが, 葉が正常な株からは検出されなかつた。したがつて American Flag の花の斑入りはウイルス性のものではないと思われる。7. 黄と赤の斑入り花をもち, その混色割合の変異が巾広い Gudoshnik は, 供試したどの株からもウイルスが検出されなかつた。本品種の花色の変異は雑種性に起因する遺伝的のものと考えられる。8. 斑入り葉 (Variegated-Leaved) と総称される品種は, 葉の黄色斑入りが規則的 (外斑) であると不規則(しま斑) であるとを問わず, すべての供試株からウイルスが検出されなかつた。用いた品種は Cochenille, Peach Blossom, Purple Kroon, Rose Luisante, Yellow Prince, William Pitt である。しかし葉に黄色斑入りのほか, 緑色部分に streak 症状を示す株や, 花に明らかな breaking 症状を示す株 (Rose Luisante) からはウイルスが検出された。したがつて, 後者は斑入り葉品種がウイルス病にかかつたものであり, もとの斑入り葉品種は遺伝的のものであることが明らかになつた。これに反して, 黄緑色の外斑葉をもつ Hydra は, 花が breaking を示さない株からもウイルスが検出された。
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