香川県における5地質系統土壌と温州ミカン幼木の生育 (予報)
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概要
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香川県内果樹栽培地帯にふつうにみられる和泉砂岩, 洪積土壌, 花こう岩, 黒雲母安山岩および讃岐岩質安山岩の5地質系統土壌の理化学的性質を1956年に調査し, 1957年4月から1959年10月の期間にはこれらの土壌をつめた1/2,000aワグナーポツトに普通温州ミカン1年生樹を植え付けて生育試験を行ない, これら土壌の理化学的性質が樹の生育に及ぼす影響を調査した。肥料はきゆう肥, 硫安, 熔成燐肥および過燐酸石灰, 硫酸カリを施用し, 石灰肥料は施さなかつた。1. 樹の全重増加量および増加率を栄養生長の総合指数として各区の生育結果を判定すると, 土壌の種類間および同一土壌においても表土区と下層土区間に差異が認められた。2. 各地質系統土壌とも例外なく表土区が下層士区より生育がすぐれた。3. 5地質系統間では讃岐岩質安山岩土壌で樹の生育が最もよく,和泉砂岩土壌ではこれにつぎ, 花こう岩および黒雲母安山岩土壌ではやや劣り, 洪積土壌では最も劣つた。4. 和泉砂岩土壌区では試験の後半において落葉がはなはだ多く, 土壌の強酸性化に起因する石灰不足も考えられるが, 落葉の原因についてはなお今後の検討が必要である。5. 洪積土壌では表, 下層土区ともに樹の生育が不良で, とくに下層土区の生育は最も劣つたが, 土壌は保水力に乏しく, 置換容量も低く易還元性Mn含量が著しく高く, とくに下層土では異常落葉および枝の枯れ込みが認められ, 葉分析の結果葉中Ca含量低くMn含量が著しく高かつた。6. 花こう岩土壌では樹の生育は中程度で, とくに養分欠乏あるいは過剰障害は認められなかつたが, 土壌は保水および保肥力に乏しく, 水分不足, Nの溶脱などによる養分不足が生育不振の主因と思われる。7. 黒雲母安山岩土壌での樹の生育は花こう岩土壌におけると同程度であり, 土壌は保水力および保肥力が最もすぐれたが, pH低くy1も超酸性を示し石灰飽和度もきわめて低く, 樹はCa吸収を著しく妨げられ生育はあまり振わなかつた。本土壌は石灰施用が肥培上必須の条件と考えられる。8. 讃岐岩質安山岩土壌での樹の生育は5地質系統土壌中最も良好であつた。この土壌は保水力および置換容量ともに大きかつたから, 葉中のMn含量がやや高く, かつ試験期間中における酸性の増大その他易還元性Mn含量がやや高いなどの陥があつたが生育障害までには至らなかつたものと考えられる。
- 園芸学会の論文