リンゴ粗皮病に関する研究 (第9報) : 砂耕培養液中のマンガン濃度と国光幼木のマンガン含有量および発病との関係
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概要
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著者はさぎに, 圃場での調査や採取試料の分析結果などから, 台木および土壌条件の相違が, リンゴ樹体のマンガン含有量に差異を生じ, それが粗皮病の発生やその程度に密接に関係することを明らかにした。1965年, さらにこれらの点を実証するために, ミツバカイドウおよびマルバカイドウ台つぎの国光 (以下, 国光/ズミ, 国光/マルバとする) の2年生苗を供試し, 0.5PPm, 30PPm, 45PPm とマンガン濃度をちがえた培養液によつて, 5月上旬から10月中旬まで砂耕を行ない, 樹体各部位のマンガン含有量および発病との関係などについて比較検討したところ, おおよそ次のような点が明らかとなつた。1. 国光/ズミと国光/マルバの新梢長には, 処理による一淀の傾向がうかがえなかつたが, 幹周肥大率, 全重量 (地上部, 地下部) の増大率および T/R 比から, 国光/マルバは国光/ズミよりも処理による影響をうけることが少なく, 生育が旺盛で, 地上部と地下部の間にも適当な均衝が保たれていることが判つた。2. 樹体各部位の分析の結果, 葉は晩秋に採取したので, 試料として必らずしも適当でなく, 30ppm 区, 45ppm 区 (以下, 処理区とする) では, 国光/ズミと国光/マルバの間にほとんどマンガン含有量の差がなかつた。しかし 0.5ppm 区 (以下, 標準区とする) においては, 両者間に明らかな差異が認められた。枝梢と太根の皮部では, 標準区•処理区ともに国光/ズミは国光/マルバよりもマンガン含有量が多く, 処理により, また処理濃度がますにつれて, いずれもその含有量が高まつた。なお, 処理区において, 1年枝よりは2•3年枝にマンガンがやや多く集積されていた。ところが細根においては, 前記とちようど逆で, 国光/マルバは国光/ズミよりもマンガン含有量が多く, 処理によつて細根中のマンガン濃度が急激に高まり, そのため両者の差がさらに顕著であつた。3.この枝梢•太根の皮部と細根との間に見られる, 国光/ズミと国光/マルバのマンガン含有量における相反現象はさきに報告した台木の砂耕試験の結果と傾向がほぼ一致している。しかして, 処理区における細根の異常に高いマンガンの値は, 細根の Mn++ の積極的吸収と過剰蓄積によるものであつて, 枝梢•太根の皮部における国光/ズミと国光/マルバのマンガン含有量の相違は, 細根の Mn++ 吸収力の強弱よりは, むしろ台木のマンガン吸収量の多少に帰因するもので, またそれが粗皮病の発生の有無, 程度と関連するものと推察される。4. 処理による国光/ズミ, 国光/マルバの発病経過と新梢の罹病率を調べたところ, 既往の圃場観察結果と同様, 8月末には処理区の一部の個体に初期病徴が認められたが, 標準区の国光/ズミ, 国光/マルバと 30ppm区の国光/マルバには最後まで発病するものがなかつた。一方, 処理区の国光/ズミでは, 時季の進むにつれて発病するものが多く, かつその症状も激しさを加えたが, 30ppm 区よりは 45ppn 区において, 新梢の発病率が高く, 国光/マルバにも少数の初期病徴を呈するものが認められた。なお, 同一処理の同じ組合内でも, 個体によつて症状に軽重の差があり, 症状の進んでいるものは, 然らざるものにくらべて, 枝梢•太根の皮部のマンガン濃度が高かつた。