栽培ギクの染色体研究 (第1報) : 栽培ギクの染色体数について (その1)
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概要
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1. 栽培ギクの品種分化の実態を染色体面から明らかにするために, 近年わが国で広く栽培されている各種栽培ギクのうち特に, 観賞用ギクの染色体数の広汎な調査を行なつた。2. 本研究に供試した系統および品種数は次のごとくである : 各種観賞用大輪ギク80品種, 同中輪ギク32品種, 同小輪ギク14品種。3. 染色体数の調査結果は第1表に示した。その結果, 次のごとき知見が明らかとなつた。1) 各種類の観賞用ギクはすべて, 2n=52〜75+Bの範囲内で種々の異数体品種を包含しているが, おのおののひん度は種類によつて異なり, 染色体数の変異の幅にも広狭が認められた。2) 観賞用大輪ギクは概して染色体数が2n=54〜75+Bと大幅な変異を示し, ほかの種類では比較的変異は小さい。3) 観賞用大輪ギクに属する広物ギク (広しおよび美濃ギクを含む) では, 21品種中18品種は2n=70〜75+Bで, 極度に多い染色体数を有しており注目される。4) 観賞用中輪ギク (江戸ギク, 嵯峨ギク, 伊勢ギク, 肥後ギク) および観賞用小輪ギク (文人ギク) の染色体数の変異は比較的小さい (2n=52〜56)。5)観賞用大輪ギク, 特に, 厚物ギクおよび管物ギクについて品種群の時代的変遷と染色体数の変化を調査した結果, 35年前のキク品種群には2n=60の染色体数をもつ品種が最も多く, これを境にして2n=53〜59までと2n=60〜67までおのおの同数ずつ存在したが, 今日の品種群は2n=54〜73と変異の幅が明らかに拡大されているが, 全体的には2n=54あるいはそれに近い染色体数の出現ひん度が高い。一方, 2n=54±1を有していた観賞用小輪ギクの一種, 文人ギクについてはこのような染色体数の上での時代的変化はほとんど認められなかつた。
- 園芸学会の論文