ハクサイの葉の内部形態及び発育に及ぼす温度の影響
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概要
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ハクサイの結球の機作を明らかにする一段階として, 小結球の形成に至る葉の形態形成上の変化及びそれへの温度の影響について調査した. 調査材料はファイトトロンを用い, 高温区: 30-25°C, 中温区: 23-18°C, 低温区: 15-10°C (それぞれ昼-夜温) の3段階で栽培した.1. 第5葉における中肋の厚さは中温区で最大になり, 高温区で最小となった. 背腹軸に沿った柔細胞の列数は低温区ほど多く, またその列数における向軸側の背軸側に対する比率は低温区ほど大きかった. 柔細胞の長さは高温区ほど大きかった. 中肋の葉脈は低温区ほど太かった.2. 葉身は低温ほど厚く, その表皮細胞は低温区ほど小さく, 輪郭が単純であった.3. 葉原基幅の増加は高温ほど速かった.4. 茎頂から数えて一定の位置の葉原基まで脈間形成層が認められたが, 低温区ほど古い葉原基まで, また葉原基がより大きくなるまで認められた.5. 葉原基の伸長する角度は, 下位葉では直立していたが, 葉位が上がるに従って徐々に内側へ曲がるように変化し, 最終的には茎頂を覆うようになった. それらが次々と重なることにより小結球を形成したが, この過程は低温でより早く進行した.6. 葉原基中の柔細胞数の増加は高温区ほど速く, かつ下位葉では背腹でほとんど差がなかったが, 上位葉では向軸側での増加率が背軸側より大きくなった. 高温区では柔細胞数の増加が早く終ったため背腹での差が小さかったが, 脈間形成層の消えた葉原基の位置から見て, 柔細胞数は低温区ほど長い間増え続け, 背腹の差も大きくなったと考えられる.7. 植物体の生長に伴って, 葉原基の下偏生長が強まるのと柔細胞数の増加率において向軸側が背軸側より大きくなり, 更にその差が拡大した過程とは対応が見られた. この点から葉原基の下偏生長は, 柔細胞数の増加率が背軸側より向軸側が大きい状態において, 向軸側の細胞伸長が抑えられたため起きたと考えられる.8. “包被葉”の形成には葉身の下偏生長 (巻き込み) も関与していた. 葉身の下偏生長の機作は明らかにできなかったが, 双子葉植物の多くに見られるように, 細胞の増加の仕方が葉身の各組織で異なることによって起こる可能性が考えられる.
- 園芸学会の論文