クリの更新せん定の強さが樹の生育, 収量及び平均果重などに及ぼす影響
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概要
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本研究は低収成木樹及び老木樹における収量の増加と果実品質の向上, 並びに経済樹齢の延長をはかるために更新せん定の強さとその効果について検討した.1. 更新せん定の強さとその後の樹の生育との関係は, 強く切るほどおう盛な生育を示すとともに, しかもこの影響は長年月持続した. 弱い更新せん定では, 3年後に樹勢が衰弱し, 更新せん定前の状態にもどった. しかし, このような場合でも, 再び更新せん定を実施すると, 樹勢が著しく回復した.2. 1本の樹の中で主枝あるいは亜主枝の一部を強く更新せん定した場合に比べて, 大部分を強く更新せん定した場合には, 無更新部から発生した新梢でもその生育がかなりおう盛となる傾向を示した.3. 更新せん定の程度が強くなるほど, 樹冠内の葉量 (LAI, LAD) が多くなり, 葉材比及び葉辺材比が顕著に大きくなった.4. 1年目の樹当りの収量は, 更新せん定の強さに比例して著しく減少した. しかし, 3年目以降は, 逆に更新せん定の強さに比例して多くなり, 5年間の累積収量は, 強区が最も多く, 次いで中位区, 弱区の順となった. また, 樹冠占有面積当りの収量も, 樹当りの収量の推移とほぼ同じ傾向であった.5. 平均果重は更新せん定前に比べて, 更新せん定の程度が強くなるほど明らかに大きくなり, 強区では5年間この効果が認められたが, 弱区の果実は3年目で更新せん定前の状態にまでもどった. しかし, この場合でも再度の更新せん定によって5年目の果実は, 極めて大きくなった.6. 以上の結果から, 既成の低収成木園及び老木園における生産性の向上と経済樹齢の延長には, すべての主枝, 亜主枝を強く切りもどす一挙全面更新せん定又は数年間で樹冠全面を更新する計画的部分更新せん定の方法が適当と考えられた.
- 園芸学会の論文