和梨果實の袋掛に關する生理學的研究 (第3報):袋掛の時期が果點コルクの發達に及ぼす影響
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概要
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本實驗は袋掛の時期が和梨果點コルクの發達に如何なる影響を及ぼすかを5月15日より10日毎にセロファン紙を被袋し, 幼果並に成熟果に就き觀察測定したるものである。尚ハトロン紙をも被袋し, 比較檢討を行ふこととした。その大部分は昭和12年度に長十郎, 二十世紀, 赤穗及眞鍮を材料として施行せるものであるが, 昭和11年度に於ける成績の一部をも掲げ考察のための資料に供した。以下その大要を要約する。1. 袋掛の時期が果點コルクの發達に及ぼす影響は和梨品種並に被袋材料により著しく異つてゐる。ハトロン紙の袋は各品種を通じ果點コルクの發達に顯著なる影響を與へない。セロファン紙の袋は二十世紀を除く他の供試品種の何れに對しても極めて明瞭に果點コルクの發達を大ならしめて居る。而して袋掛時期の影響はセロファン紙を二十世紀以外の品種に被袋せる場合に闡明に表はれ, 早期に袋掛することにより, 果點の大さが大となる。2. 袋掛時期による果點コルク發達程度はその影響を受ける品種内に於ても若干の相違が認められる。同じく中間色種に屬する品種であつても赤穗は眞鍮に比し顯著に影響される。3. 袋掛による果點コルク發達が影響される時期は幼果時代に特に著しいやうであり, 果點コルク形成機能の季節的消長に關連し, 少しく考察を試みるところがあつた。4. ハトロン紙, 新聞紙, 蝋紙等の被袋は果實を無被袋の状態に放任するよりも果點コルクの發達を小ならしむることが, 各品種を通じ一樣に示されてゐる。從て袋掛により果點コルクの發達を小ならしめんがためには, 之等の袋を早期に掛けることが必要である。5. 二十世紀に於ては何れの袋でも早期に掛けることにより, 果點コルクの發達を小ならしむることが出來るが, 長十郎, 赤穗, 眞鍮に於ては袋の種類により異なる影響を與へてゐる事實は, 今後袋掛に關する問題檢討の上に興味あることであり, 果點コルク發達を支配する要因, 並に果點コルク形成機能の季節的消長等に關しては後日實驗を繰り返して報告する機會を得たいと思ふ。
- 園芸学会の論文