和梨二十世紀の袋に關する1, 2の實驗
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概要
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1. 昭和11, 12年の兩年にわたつて, 東京府立農事試驗場内の二十世紀梨につき, 被袋材料が, 果實に及ぼす影響を季節的に調査し (11年), 且被袋時期の早晩の成熟果に及ぼす影響を調査した (12年)。11年には, パラフヰン紙, ハトロン紙, 新聞紙, の3種を用ひ, 12年度には, パラフヰン紙と新聞紙との二重掛を行つて調査した。2. 被袋材料及方法の相異は, 本實驗の結果に於ては, 生育各期の果實の大さ, 形状には何等の影響を及ぼさなかつた。3. 果實色の袋による變化はすでに被袋後1ケ月にして, 明瞭にあらはれ, 緑色部の濃度は新聞紙最も淡く, 次でハトロン紙で, パラフヰン紙は最も濃色であつた。其後緑色部の色は7月下旬迄は變化なく, 生育期の後半に至つて漸次褪色が著しくなり, 成熟間際になつて著しい褪色を示した。成熟果に於ては,ハトロン2重掛, 新聞2重掛のものは全面に全く緑色を消失し, 各1重掛のものはやゝ緑色部を殘してゐたが, きはめて小範圍であつた。第1囘掛にパラフヰン紙を用ひたものは, 上紙の如何に拘はらず最期迄全面に緑色を殘してゐた。一般に紙質による褪色の影響は幼果に於て著しい事が認められた。4. 新聞紙及ハトロン紙袋による成熟果の黄色化に至る經過は, 既に被袋後1ケ月目に明にあらはれ, 先づ果梗の周圍が褪色し, それを中心として放射状に褪色してた縞模樣を現し, これは生育の進むにしたがつて不規則な褪色斑となり, 成熟間際に至つて, 著しく擴大し, 全面に及ぶ。かゝる褪色斑の出現は袋の皺等による光線透過率の不均等によるものと解せられた。なほパラフヰン紙を第1囘に用ひたものは, かゝる褪色斑はあらはさず, 上袋の如何に拘はらず一樣に, 緑色の褪色が見られた。これも被袋材料の影響が, 幼果に著しい事を示す1例と見られた。5. 果點コルク層は, 幼果に於ては, パラフヰン紙袋の使用により, 著しく發生を抑制し, 且小ならしむるも, 果實が急激な生長を開始して後 (7月上旬以後), その上に他紙を二重掛しないと, 著しく大となり, 商品價値を害する危險性があつた。各期を通じ, 最も果點の小なるものは, パラフヰン純二重掛であり, 次いでパラフヰン, ハトロンの2重掛及びパラフヰン, 新聞の二重掛區であつて, この方法は他區に比し著しく果點小であつた。ハトロン一重掛とハトロン二重掛は殆んど變化なく, 新聞二重掛は, 一重掛よりむしろ大なる傾向が明であつた。6. 果點間コルク層發生は新聞紙最も早く, 且多い傾向があり, ついでハトロン紙であるが, 兩紙の二重掛と一重掛の差異は明でなかつた。パラフヰン紙を第1囘掛に用ひたものは發生全然なきか, 又は發生してもごく少く, 外觀に影響を及ぼす程度ではなかつた。7. 12年度の被袋時期試驗結果は第1囘目被袋の早い程, 果點は小であり,且果點間コルク層の發生が著しく少く, 外觀を美麗ならしめ, 晩れるにしたがつて, 果點大となり, 特に果點間コルク層の發生の危險性を増大せしめた。8. 商品價値の大なる美麗な果實を生産するには, パラフヰン紙と他紙との二重掛が是非必要であり, 且第1囘被袋は, 可及的に早く行ふべきである。
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