蜜柑の追肥としての燐酸及加里の影響
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概要
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宮川系早生温州の同一母樹の穗に依つて作れる苗を, 山地の原土と砂とを混合して樽植となし, 其の極めて齊一なる樹を選び, 葉數と結果數をも齊へて,夏期の追肥の試驗を施行し, 概要次ぎの如き事實を知るを得た。1) 燐酸單獨追肥の影響は極めて顯著で, 之れに依り葉色薄らぎ, 果實の着色は凡そ半月促進せられ, 果汁中の拘櫞酸量は約20%を減じ, 著しく甘い果實となつた。 然し完熟期に於ける着色濃度は劣つて居た。2) 加里の單獨追肥の效果は比較的甚だ不明瞭であつた。3) 燐酸, 加里兩成分の併用追肥は, 其の何れの成分の作用をも充分に認むるを得なかつた。4) 然るに窒素 燐酸及び加里の各要素を等量に施用したものは, 果實の着色及び果汁中の糖分量に, 加里の影響の甚だ明瞭に現はるゝを見た。5) 本試驗の成績から, 燐酸は單獨に其の效果を果實に現はし得るが, 加里が其の作用を充分に發揮するには適量の窒素の存在を必要とするものと想像せられる。6) 自然の圃場とは著しく異なれる本試驗の成績は, 何れの場合にも其の儘適用し得るものではなく, 之れが實際應用に際しては, 甚だ複雜なる諸般の事情を充分考慮斟酌せねばならぬ。
- 園芸学会の論文